1. はじめに
こんにちは、色彩とフットボールを愛するブログライターYchanです。
ピッチ上の22人は、ただ走っているわけではありません。彼らは「動く色彩情報」です。
特にサンフレッチェ広島というクラブは、Jリーグの中でも極めて特殊な立ち位置にあります。「高貴」「神秘」を象徴する紫(バイオレット)をクラブカラーに持つチームは、世界的に見てもフィオレンティーナ(イタリア)など少数です。(日本にも何チームかありますね🟣🟣🟣🟣)
紫は、色彩学的には扱いが難しい色の一つです。赤(興奮)と青(鎮静)という、正反対の性質を持つ色が混ざり合ってできているため、デザインのさじ加減一つで「優雅」にもなれば、「不安」や「下品」にも転びます。
2026シーズン、NIKEとサンフレッチェが提示してきた回答は、あまりにも対照的な3つの顔でした。
革新を通り越してカオスを感じさせるHome Kit、安全策に逃げた(あるいは完成された)Away Kit、そして古参サポーターの涙腺を崩壊させに来たACLE Kit。
この「三者三様」のポートフォリオは、まさに色彩の実験場です。メーカーの商業的意図とクラブのアイデンティティが、どこで調和し、どこで不協和音(ディソナンス)を奏でているのか。色彩検定の知識をフル動員して紐解いていきましょう。
2. 【前提知識】サッカーにおける「色の機能」とは?
本題に入る前に、少しだけ色彩学の講義をさせてください。これを理解すれば、あなたのユニフォームを見る目は劇的に変わります。サッカーにおいて色は単なる装飾ではなく「機能」という側面もあります。
① 進出色と後退色
色は距離感に影響を与えます。赤やオレンジなどの暖色は飛び出して見える「進出色」、青や紫などの寒色は奥に下がって見える「後退色」です。
紫を基調とする広島は、ピッチ上で実際よりも「遠く、小さく」見える傾向があります。これはデメリットに思えますが、相手ディフェンダーからすると「距離感を見誤る」という錯覚を引き起こせる武器にもなり得ます。
② 誘目性と視認性
「誘目性(Attention)」は、無意識に目がいく性質(例:工事現場の黄色と黒)。
「視認性(Visibility)」は、背景との区別のしやすさです。
サッカーにおいて最も重要なのは、緑の芝生(中彩度の緑)とのコントラストです。紫は緑の「補色(反対色)」に近いため、理論上は悪くないのですが、明度が低い(暗い)と芝と同化しやすくなります。ここで重要になるのが「アクセントカラー(差し色)」の役割です。
③ トーン(Tone)の概念
色彩学では、色の「明るさ(明度)」と「鮮やかさ(彩度)」をまとめて「トーン」と呼びます。
同じ紫でも、「ビビッド(冴えた)」トーンなら活発に、「ダーク(暗い)」トーンなら重厚に見えます。今回のサンフレッチェ広島のユニフォームは、この「トーンの操作」に大きな意図が隠されています。
3. Home Kit レビュー:カオスの中に宿る「動」の美学

<引用>サッカーショップ【SWS】サッカーユニフォーム、サッカー用品通販 フットボールパーク
https://www.sports-ws.com/commodity/SKOB1347D/NI1757EM078783/
まずは、Home Kitから見ていく。
3-1. 色彩分析:PCCSによる解剖
メインカラー
ベースとなっているのは、PCCSで言うところの「dp22(ディープ・バイオレット)」に近い、非常に明度の低い紫。そこに、少し彩度を上げた「s22(ストロング・バイオレット)」あるいは「lt22(ライト・バイオレット)」程度の明るい紫で、不規則なグラフィックパターンが施されている。
この配色は「トーン・オン・トーン(同一色相の濃淡配色)」と呼ばれる技法だ。通常、この配色は「統一感」や「落ち着き」を生むために使われる。
しかし、このデザインはどうか。落ち着くどころか、視覚的なノイズが凄い。
柄の形状は、稲妻のようでもあり、ひび割れた大地、あるいは激流のようでもある。ここで使われているテクニックは「視覚混合」の一種。遠目に見ると、暗い紫と明るい紫が混ざり合い、単色では出せない「震えるような紫」を作り出す。
そして、最も議論を呼ぶのが胸のスポンサーロゴ「EDION」。
「E・D・I」は白、「O・N」の電源マーク部分は「v5(ビビッド・オレンジ)」に近い色。
紫(青紫系)とオレンジ(黄赤系)は、色相環上で向かい合う「補色色相配色」の関係。これは「ハレーション(目がチカチカする現象)」を起こす寸前の、強烈なコントラストを生む。
3-2. 批評:伝統破壊か、新時代の覇者か
まずこのデザインを「機能美」の観点から評価するなら、「ピッチ上での強さ」を演出できていると感じる。
ダークトーンのベースに不規則な明るい柄を入れることで、選手の身体の輪郭をあえて曖昧にしている。これは「ダズル迷彩(幻惑迷彩)」に近い効果があり、相手選手にボディの向きや筋肉の動きを読ませにくくする効果が期待できる。静止画で見ると「ガチャガチャしてうるさい」と感じるかもしれないが、躍動する選手が着て初めて完成するデザインだ。
一方で、批評的な観点からも論じる。
この柄、インターネットで「ブルーベリーヨーグルトをぶちまけた床」とか言われてませんか?
あるいは「血管が浮き出たようなデザイン」とも。
トーン・オン・トーンは失敗すると「汚れ」や「ムラ」に見えるリスクがある。今回の柄は非常に有機的で、幾何学的な美しさに欠けるため、人によっては「生理的な不快感」を覚えるギリギリのラインを攻めている。
また、NIKE特有の「グローバル・テンプレートの流用疑惑」も拭えない。この「ひび割れ柄」、欧州のどこかの3rdユニフォームで見たような既視感が。。
しかし、それを補って余りあるのがゴールドのSwoosh(ナイキロゴ)の配置。紫×金は「コンプレックス・ハーモニー」に近い、王道かつ高貴な配色。これが全体の品格を保っている。
総評として、このHome Kitは「商業的な成功(目立つ)」と「ピッチ上の機能(幻惑)」を優先し、「伝統的な美(シンプルさ)」を生け贄に捧げた攻撃的な一着。嫌いな人はとことん嫌いでしょうが、私はこの「毒のある紫」を支持する。
4. Away Kit レビュー:完璧な計算、あるいは怠惰な流用

<引用>サッカーショップ【SWS】サッカーユニフォーム、サッカー用品通販 フットボールパーク
https://www.sports-ws.com/commodity/SKOB1347D/NI1757EM069587/?srsltid=AfmBOopD_8amLI7AQ4cdo6massnpGhgGFjdfZwR_WFz8a34JDbdxMZGt
続いて、Away Kitは、2025シーズンと同様のデザイン。
4-1. 色彩分析:PCCSによる解剖
ベースカラーは「W(ホワイト)」。これ以上ない高明度の色。
そこにアクセントとして、襟元と袖、サイドパネルにHome Kitと同じ紫、そしてゴールドが配されている。
ここで注目すべきは、色彩の「セパレーション(分離)」効果。
白地に対して、首元に濃い紫(締め色)を配置することで、視線が顔周りに誘導される。サッカー選手にとって、顔がはっきり認識できることは、ファンエンゲージメントの観点から非常に重要。
また、ロゴのEDIONも、ここではカラフルな企業ロゴカラー(青、赤、オレンジ)がそのまま使われることが多いですが、白地であれば「マルチカラー配色」として成立する。白は何色とでも喧嘩しない「無彩色」だからだ。Home Kitでは紫地と喧嘩していたロゴも、白地の上ではポップなアクセントとして機能している。
4-2. 批評:完成された「退屈」
色彩学的に見れば、このAway Kitは100点満点の「優等生」。
緑の芝生(中明度)に対し、白(高明度)のユニフォームは最高の視認性を誇る。パスの出し手からしても、味方を見つけやすい。ファッションとして見ても、白×紫×金は清潔感があり、街着としてもポロシャツ感覚で着られる。
5. ACLE Kit レビュー:サポーターの魂を震わせる「真の紫」

<引用>サッカーショップ【SWS】サッカーユニフォーム、サッカー用品通販 フットボールパーク
https://www.sports-ws.com/commodity/SKOB1347D/NI1757EM069593/?srsltid=AfmBOopYEiOKBa0Q-leuLjPoMrcCPHRpvaJeS6jZzk1N7fGU0Us8t_7G
最後に、ACLE(ACL Elite)用 Kit。個人的には、これが今シーズンの「裏メイン」。
5-1. 色彩分析:PCCSによる解剖
このユニフォーム最大の特徴は、「チェック(格子)柄」。
色彩学的には、ベースの「dp22(ディープ・バイオレット)」と、それよりわずかに明度を落とした「dk22(ダーク・バイオレット)」による、極めて低コントラストな配色。
Home Kitのカオスな柄とは対照的に、こちらは幾何学的で秩序がある。
チェック柄は、伝統、規律、そして英国発祥のフットボールへのリスペクトを想起させる。
特筆すべきは、全体が非常に暗いトーンでまとめられていること。PCCSトーン図の最下部に位置する色だけで構成されており、「重厚感」「威厳」「歴史」といった色彩感情をダイレクトに訴えかけてくる。
そして、胸のロゴ。「MAZDA」。
この5文字が、色彩理論を超越した効果を生む。
ロゴの色は白とシルバー。暗い背景色に対して、明度差をつけた文字は浮かび上がって見える。フォントの線の細さが、洗練された印象(モダン・エレガント)を与えている。
5-2. 批評:マツダという「記号」の勝利
色彩学の教科書には載っていませんが、デザインには「意味の色彩」というものがある。
広島サポーターにとって、「胸のMAZDA」は単なるスポンサーロゴではない。それは東洋工業時代からの歴史、栄光、そしてクラブのアイデンティティそのもの。
Home KitのEDIONロゴが「補色による衝突(=商業的ノイズ)」だとしたら、ACLE KitのMAZDAロゴは「ドミナント・トーン(同一トーン)の中の星」。
チェック柄の紫が持つ「クラシックな雰囲気」と、MAZDAロゴの持つ「レトロフューチャーな形状」が、奇跡的な「テクスチャ・ハーモニー」を生み出す。
批判点を探すのが難しいほどですが、強いて挙げるなら「夜の試合での視認性」だろうか。
ACLの試合は夜に行われることが多いですが、ここまで暗い紫は、照明の当たり方によっては黒と区別がつかず、ピッチの暗いエリアでは選手が「消える」可能性が。。
しかし、その「闇に紛れる」感じこそが、アジアの強豪を討ち取る「忍び」のような機能性を持つかも。
これは間違いなく「一番売れる」ユニフォーム。
ファンが仮にHome Kitのデザインは微妙だなと思っても、ACLEが最高だから許す!となる。この最高傑作がアジアの頂点に立つことを心から祈っている。
6. おわりに
2026シーズンのサンフレッチェ広島のユニフォームは、色彩学的に見ると「トーンの分散(スプリット)」が見事なラインナップでした。
- Home: カオスと衝撃の「動的」紫(誘目性重視)
- Away: 安心と信頼の「静的」白(視認性重視)
- ACLE: 伝統と威厳の「史的」紫(象徴性重視)
NIKEとクラブは、意図的にターゲットを分けています。新しいファンや子供たちには、派手で強そうなHomeを。実用性を求める層にはAwayを。そして、古くからの熱狂的なサポーターには、涙が出るほどクラシックなACLEを。
プロの目から見れば、これは「改悪」などではありません。むしろ、多様化するファンの嗜好に、色彩の力で全方位から応えようとする高度なポートフォリオ戦略です。
さて、あなたの心は、どの色に反応しましたか?
「ブルーベリーヨーグルト」と呼ばれようともピッチで輝くHomeか、あえて変わらないAwayか、それともマツダのロゴが輝く夜の正装か。
さあ、スタジアムを紫で染め上げよう。もちろん、スタジアムにはMAZDA車で🚗 帰りはEDIONで家電を買って💡
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