【Football×ユニフォーム×色彩学】トッテナム・ホットスパー 25/26 ユニフォーム徹底レビュー:Total 90の亡霊と「Excel」と呼ばれたアウェイ

Football×ユニフォーム×色彩学

1. はじめに

こんにちは、色彩とフットボールを愛するブログライターYchanです。
さて、今回は私が愛してやまないトッテナム・ホットスパーの2025/26シーズンモデルを取り上げます。

なぜ今、スパーズなのか。それは今季のNikeのラインナップにおいて、スパーズのキットが**「色彩学的実験」と「懐古趣味(レトロスペクティブ)」の極致**にあるからです。

毎年、「白と紺だけだろ?」と他サポに揶揄されるスパーズのホームキット。しかし、2025/26モデルは、その白いキャンバスにNikeが仕掛けた「視覚誘導」の罠と、アウェイ・3rdに見られる極端なコントラストの差が非常に興味深い。特に3rdキットにおける「Total 90」リバイバルの動きは、色彩心理とマーケティングが見事に(あるいはあざとく)融合しています。

ファンからは「原点回帰」と歓喜の声が上がる一方で、「手抜き工事」「眼科検診の紙」などと揶揄されるデザインも混在しています。色彩学の知識をフル動員し、メーカーへの忖度なしで、賞賛7割・毒舌3割の黄金比でぶった切っていきましょう。

2. 【前提知識】サッカーにおける「色の機能」とは?

本題に入る前に、レビューを読み解くための「補助線」を引いておきます。色彩学には、サッカーの勝敗やファンの心理に影響を与える重要な概念があります。

  • 進出色と後退色
    赤やオレンジなどの暖色は手前に飛び出して見える「進出色」、青や黒などの寒色は奥に下がって見える「後退色」です。トッテナムの白(無彩色)は、光を反射する「膨張色」であり、選手を実際よりも大きく見せる効果があります。これが「白い巨塔」としての威圧感の正体です。
  • 誘目性(ゆうもくせい)
    人が無意識に目を向けてしまう性質のこと。黄色や赤は誘目性が高く、ピッチ上で味方を見つけやすいという機能的メリットがあります。逆に、彩度の低いグレーや黒は背景に馴染みやすく、パスミスを誘発するリスクも孕んでいます。
  • 興奮色と鎮静色
    文字通り、見る人の血圧や脈拍に影響を与える色。赤はアドレナリンを分泌させる「興奮色」、青は冷静さを取り戻させる「鎮静色」です。

これらの理論が、今回の3枚のユニフォームにどう適用されているか(あるいは無視されているか)を見ていきましょう。


3. Home Kit レビュー:伝統の「白」を汚すのは誰だ?

色彩分析:PCCSトーンと視覚的ノイズ

Official Spurs Shopより引用
https://shop.tottenhamhotspur.com/mens-elite-tottenham-hotspur-home-shirt-2025-26/emhss25

まず画像①のホームキット。ベースカラーはもちろんホワイト(W)。そこにアクセントとしてラグランスリーブにネイビー(dp18:ダークブルー)が配置されています。

特筆すべきは、PCCS(日本色研配色体系)で言うところの**「コントラスト配色」**の強さです。白(明度9.5)とネイビー(明度3.0付近)の明度差は最大級。これにより、選手の輪郭、特に肩幅が強調され、フィジカルが強く見える視覚効果(錯視)を狙っています。

しかし、色彩学的に見て最大のノイズは、胸スポンサー「AIA」の赤(v2:ビビッドレッド)です。トッテナムの「白×紺」は、誠実さや知性を表す「高潔な配色」ですが、ここに彩度・明度ともに主張の激しい赤が入ることで、**「ハレーション(色滲み)」**に近い不快感を視神経に与えます。これが「なんか落ち着かない」原因です。

ネットの評判

SNS上での反応は、構造に関しては好意的ですが、ディテールには賛否両論です。

  • 賞賛:「中央エンブレム(Central Crest)の復活!2005/06シーズンのKappa時代を思い出してエモい」「袖のネイビーが筋肉質に見せてくれそう」
  • 批判:「中央にロゴが積み上がってて、トーテムポールみたい」「AIAの赤がデカすぎて、ユニフォームというより『AIAの看板』を着てるみたいだ」

批評:色彩学の視点

【賞賛】
中央配置(センターエンブレム)は英断です。視線が身体の中心軸(正中線)に集まるため、体幹が太く、強く見えます。色彩学的にも、左右対称(シンメトリー)な配色は安定感と権威を与えます。ラグランスリーブのネイビーも、肩の可動域を強調し、アスリートとしての機能美を際立たせています。

【毒舌】
さて、問題のAIAです。色彩調和論における「ドミナントトーン(トーンを揃える)」を完全に無視しています。この赤だけが浮いており、まるで**「白米の上に置かれた巨大な梅干し」**。
色彩設計としては、スポンサーロゴをネイビーに変更するのが最適解ですが、契約上の「コーポレートカラー厳守」という大人の事情が、美学を破壊しています。デザイン自体は80点なのに、この赤色の彩度が高すぎるせいで、全体が安っぽく見えてしまうのが非常に惜しい。これでは「強豪クラブ」というより「保険会社の営業マン」です。


4. Away Kit レビュー:これは「モード」か「方眼紙」か?

色彩分析:同化現象と視認性の欠如

Official Spurs Shopより引用
https://shop.tottenhamhotspur.com/Mens-Elite-Tottenham-Hotspur-Away-Shirt-2025-26/EMASS25

アウェイキットは、黒(Bk)をベースに、ダークグレー(dkGy)でグリッド(格子)模様が描かれています。ロゴ類はライトグレー(ltGy)で統一された、完全な**「無彩色(アクロマティック)配色」**です。

ここで注目すべきは**「同化現象(フォン・ベゾルト効果)」です。黒い地色に細かいグレーの線が入ることで、遠目に見ると色が混ざり合い、全体がぼんやりとしたチャコールグレーに見えます。
色彩心理的には「都会的」「洗練」「モダン」といったキーワードが浮かびますが、スポーツ色彩学の観点からは「視認性(Visibility)」が著しく低い**と言わざるをえません。

ネットの評判

インターネット、特にX(旧Twitter)では、このデザインが大喜利のネタにされています。

  • 賞賛:「街着として最高。ジーンズに合う」「テックウェアっぽくてクール」
  • 批判:「完全にExcel(エクセル)のスプレッドシート」「数学のノート(方眼紙)を着てどうする」「パジャマみたいだ」
  • ミーム化:「このマス目で五目並べができるぞ」「戦術ボードをそのまま着てきたのか?」

批評:色彩学の視点

【賞賛】
ファッションアイテムとしては100点です。無彩色のトーン・オン・トーン配色は、色彩検定でも「ハイセンスな配色」の代表例として扱われます。特にエンブレムまでモノクロ化したことで、統一感(ユニティ)は完璧。スタジアムまでの道中や、パブで飲む際には最高にクールでしょう。Nikeが狙っている「ライフスタイルへの浸透」という商業的意図は成功しています。

【毒舌】
しかし、フットボールキットとしては**「自殺行為」**に近いです。
夜のスタジアムの芝生の上で、黒に近いグレーは背景(観客席の影など)と同化します。周辺視野(目の端っこ)で味方を認識しなければならない高速なプレミアリーグの展開において、この「ステルス迷彩」のような配色は、コンマ1秒の判断遅れを招きます。
「方眼紙」と揶揄されるグリッド柄も、ピッチ上ではノイズにしかならず、遠目にはただの「汚れた黒」に見える可能性大。パリーニャが味方を見失ってパスミスをした瞬間、この「Excelユニフォーム」はファンの怒りの計算式で埋め尽くされるでしょう。


5. 3rd Kit レビュー:Total 90の帰還と「黄色」の魔力

色彩分析:誘目性とレトロ・フューチャー

Official Spurs Shopより引用
https://shop.tottenhamhotspur.com/Mens-Elite-Tottenham-Hotspur-Third-Shirt-2025-26/EMTSS25

3rdキットは、鮮やかなイエロー(v8:ビビッドイエロー)をベースに、青みのあるアクセントカラーを採用しています。
これは2000年代中盤に一世を風靡したNikeのデザインテンプレート**「Total 90(T90)」**のリバイバルです。

色彩学的に、黄色は黒に次いで**「誘目性」が高い色**(背景が白以外の場合)であり、ピッチ上での存在感は抜群です。また、黄色は「警告色」でもあり、相手選手に対して本能的な警戒心を抱かせ、心理的なプレッシャーを与える効果も期待できます。
配色は「黄色×青」という**「補色色相配色(対照色相)」**に近い関係(正確には対照色相)であり、互いの色を引き立て合うダイナミックなハーモニーを形成しています。

ネットの評判

ここはファン層の年齢によって反応が真っ二つです。

  • 賞賛:「Total 90世代歓喜!ロビー・キーンが見える!」「これぞスパーズの3rd。黄色じゃなきゃダメだ」
  • 安堵:「ホームとアウェイがアレだったから、これが一番まともに見える」「やっとサッカーチームらしい服が出てきた」
  • 困惑(Z世代など):「なんか古臭い」「工事現場の人?」「マクドナルドの店員?」

批評:色彩学の視点

【賞賛】
これは今季の「傑作(マスターピース)」です。
色彩検定の観点からも、ビビッドな黄色と深い青のコントラストは「明瞭性(明視性)」が高く、スポーツウェアとして理想的。アシンメトリーな切り替えラインは、視線を斜めに誘導し、選手の動きをよりスピード感あるものに見せます(動的な視覚効果)。
また、20年前のデザイン言語を現代の技術で再構築する手法は、今のファッショントレンド「Y2K」とも合致します。商業的にも、オールドファンとトレンドに敏感な若者の両方を狙い撃ちできる、極めて戦略的なデザインです。

【毒舌】
ただし、襟元の処理やロゴの配置が少し「ガチャガチャ」しています。レトロを意識しすぎて、2000年代特有の「安っぽいポリエステル感」まで再現してしまった感は否めません。
そして、この黄色は肌の色(特に色白の選手)によっては顔色が悪く見える(黄み肌のブルーベースの人は特に)という、パーソナルカラー上の難点もあります。マディソンあたりが着ると、少し顔色がくすんで見えるかもしれませんね。


6. おわりに

2025/26シーズンのトッテナム・ホットスパーのユニフォームは、まさに**「伝統・革新・回帰」**の三つ巴です。

  • Home:伝統を守ろうとして、スポンサーの「赤」との戦いに敗れた「惜しい優等生」。
  • Away:機能性を捨ててファッションに全振りした、ピッチ上の「ステルス方眼紙」。
  • 3rd:色彩機能とマーケティングが見事に噛み合った、懐かしくも新しい「主役級の脇役」。

色彩学の視点から言わせていただければ、今季「買い」なのは間違いなく3rdキットです。視認性、配色調和、そしてエモーショナルな価値。すべてが高いレベルでまとまっています。

アウェイキットに関しては、悪いことは言いません。スタジアムに着ていくのではなく、休日のカフェでExcel作業をする時に着てください。きっと作業が捗るはずです。

さて、皆さんはどの「色」を纏って今シーズンを戦いますか?

※著作権・商標権を侵害している場合は、速やかに対処しますので、ご連絡ください。

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