【Football×色彩学】高知ユナイテッドSC 2026シーズン ユニフォーム徹底解剖!情熱のグロリオサが彩る10周年の軌跡と色彩の魔法

Football×ユニフォーム×色彩学

はじめに

こんにちは、色彩とフットボールを愛するブログライターのYchanです。

当ブログでは、「色彩検定」の資格を持つ筆者が、世界中・日本中のサッカーユニフォームを色彩学とデザイン理論の観点から徹底的に紐解き、ピッチ上での視覚効果やクラブのアイデンティティがいかに表現されているかを論理的に解説しています。単なる「かっこいい」「ダサい」という主観的な感想で終わらせるのではなく、なぜそのように見えるのか、その背景にどのような色彩の魔法が隠されているのかを解き明かしていくのがこのブログの最大の醍醐味です。

さて、今回取り上げるのは、百年構想リーグを戦う高知ユナイテッドSCのHome KitおよびAway Kitです。

クラブ誕生から記念すべき10周年を迎える今シーズン。サプライヤーである「ATHLETA(アスレタ)」が手掛けたこの勝負服は、高知県が生産量日本一を誇る花「グロリオサ」を全面に採用し、さらには生誕190周年を迎えた高知の偉人・坂本龍馬の家紋を背負うという、まさに地元への愛とリスペクトが限界まで詰め込まれた一着となっています。

発表直後からファンの間では「地元愛にあふれた素晴らしいデザイン!」「早くこれを着てスタジアムで応援したい!」と期待値が最高潮に達している一方で、情報量の多い緻密な柄に対して「実際のピッチではどう見えるのだろうか?」といった機能面への不安の声も一部で散見されます。

なぜ今回、数あるユニフォームの中から高知ユナイテッドSCのキットを取り上げるのか。それは、このユニフォームが「地域性という無形の概念」を、色と柄という「有形のデザイン」に落とし込む過程において、色彩学的に極めて高度な挑戦をしている非常に興味深いサンプルだからです。情熱、歴史、そして挑戦。それらが色としてどのように表現されているのか、じっくりと解き明かしていきましょう。

【前提知識】サッカーにおける「色の機能」とは?

本題に入る前に、少しだけ色彩学の講義をさせてください。これを理解すれば、あなたのユニフォームを見る目は劇的に変わります。サッカーにおいて色は単なる装飾ではなく「機能」という側面もあります。

進出色と後退色がもたらす心理的効果

色彩学には、手前に飛び出して迫ってくるように見える「進出色」と、奥に引っ込んで小さく見える「後退色」という概念があります。一般的に、赤やオレンジなどの暖色系かつ高彩度・高明度の色は「進出色」に分類されます。サッカーにおいて赤いユニフォームは、相手選手に対して物理的な距離以上に自分たちを「近く」「大きく」感じさせ、無意識の圧迫感や威圧感を与えるという非常に有利な視覚効果を持っています。逆に緑や青などの寒色系は「後退色」であり、引き締まったスマートな印象を与え、空間の広がりを感じさせます。

興奮色と鎮静色によるメンタルへの影響

色は人間の自律神経や感情にも直接的な影響を与えます。赤は交感神経を刺激し、心拍数や血圧を上げてアドレナリンの分泌を促す「興奮色」の代表格です。まさに「闘争心」を掻き立てる色であり、ピッチで戦う選手たちの勝負服として最適です。一方、青や緑は副交感神経を優位にする「鎮静色」であり、冷静な判断力や落ち着きを保つのに役立ちます。ユニフォームの色は、着用する選手自身のメンタルをもコントロールする目に見えない力を持っているのです。

誘目性と視認性(ピッチとの関係性)

サッカーというスポーツにおいて最も重要なキャンバスは「緑色の芝生」です。選手がピッチ上で「誘目性(無意識に目が行く性質)」「視認性(対象物の見えやすさ・形の捉えやすさ)」を確保するためには、背景となる緑とのコントラストが不可欠です。色彩学において、色相環の反対に位置する色同士を「補色」と呼びますが、緑の補色はまさに「赤」です。ピッチ上で最も目立ち、味方同士を瞬時に認識させるために、赤系のカラーは極めて理にかなった選択と言えるのです。

Home Kit レビュー

<引用>高知ユナイテッドスポーツクラブ 公式サイトより引用
http://kochi-usc.jp/news/news-54518/

色彩学のメスをいよいよHome Kitに入れていく。

色彩分析

メインカラーの色相・トーン分析

まずはメインカラーの分析から始めよう。今回のHome Kitのベースカラーは、単なる鮮やかな赤ではなく、深く沈んだエンジ色に近い。PCCS(日本色研配色体系)のトーン図で言えば、「ディープトーン(dp)」から「ダークトーン(dk)」に属する低明度・中彩度のレッドである。この暗めのトーンは、落ち着きや重厚感、そして内に秘めた底知れぬ力強さを表現するのに適している。
特筆すべきは、全面に描かれた「グロリオサ」の柄の表現方法である。全く別の色を使って柄を描くのではなく、ベースカラーと同系色相で明度や彩度にわずかな差をつけた「トーン・オン・トーン(Tone on Tone)」、あるいはほぼ同じトーンで色相だけを微細にずらす「カマイユ配色」に近い技法が用いられている。「燃える情熱」というグロリオサの花言葉を、あえて派手な多色使いではなく、同系色の濃淡という炎の揺らめきのような色彩で表現した手法は、極めてエレガントであり高く評価できる。

補色関係によるサイドパネルの配色

次に目を引くのが、両脇のサイドパネルに配置されたダークグリーンである。前提知識でも述べた通り、赤と緑は「補色(心理補色)」の関係にある。通常、赤と緑をそのまま組み合わせると「ハレーション(境界線がギラギラして目がチカチカする現象)」を起こしたり、いわゆるクリスマスカラーのようなポップで安っぽい印象を与えてしまう危険性がある。
しかし、今回のデザインでは両者のトーンを共に「ダークトーン」に落とし込むことで、見事な「トーン・イン・トーン(Tone in Tone)」の調和を生み出している。低明度の赤と低明度の緑の組み合わせは、重厚なクラシック感を醸し出しつつ、補色特有の「互いを引き立て合う効果」をギリギリのラインで維持しているのだ。

アクセントカラーと明度対比の視認性

深く沈み込んだダークなベースカラーの中で、強烈な光を放っているのが、胸の「高知家」ロゴや背番号の「白」である。PCCSにおいて白は最も明度が高い無彩色である。ダークトーンの背景に純白を配置することで「明度対比」が最大化され、視認性が極めて高くなっている。
さらに、袖口にあしらわれた10周年を示す10本のラインには、高級感の象徴である「ゴールド」が採用されている。ゴールドは黄色の類似色であり、赤系のベースカラーとは色相環上で比較的近い位置にあるため馴染みが良く、全体のデザインを引き締める上品なアクセントとして機能している。

批評

伝統と革新を見事に融合させたバランス感

デザインのコンセプト面について批評しよう。「グロリオサ」という高知の自然を象徴する有機的なボタニカル柄と、背面の襟元にひっそりと配置された「坂本家の家紋」という歴史的で幾何学的な和風のモチーフ。これらは一見すると相反する要素に思えるが、ダークレッドという統一されたキャンバスの上で見事に融合している。生誕190周年を迎える坂本龍馬の「挑戦する姿勢」を、10周年というクラブの節目に背負わせるというストーリーテリングは、ファン・サポーターのアイデンティティを強烈に刺激し、誇りをもたらすだろう。

ピッチ上での機能性(強者のオーラ)

ピッチ上でこのユニフォームがどう機能するか。ダークレッドとダークグリーンの組み合わせは、選手を非常に「強そうに」見せる効果がある。色彩学において暗い色は「重量感(重く見える効果)」を伴うため、相手選手に対してフィジカル的な強靭さや、簡単には倒れないという心理的プレッシャーを与えることができるのだ。また、サイドのダークグリーンがピッチの芝生と同化することで、正面から見た際にウエストが極端に絞られて見える錯視効果(スリミング効果)も期待でき、アスリートのしなやかな肉体美をより際立たせるだろう。

商業的意図と機能性のジレンマへの危惧

一方で、色彩学の観点から苦言を呈したい部分もある。それは「視覚混合」の問題である。近くで見ると、グロリオサのトーン・オン・トーンの柄は非常に美しく、芸術品のようだ。しかし、スタジアムのスタンドから、あるいはテレビ中継の引きのカメラで見た場合、人間の目は細かい色の差を識別できず、色が混ざって見える「正の視覚混合」を起こす。結果として、ピッチ上で躍動する選手は「ただの暗い赤無地のユニフォームを着ている」ように見えてしまう可能性が極めて高い。
また、胸の「高知家」という巨大なタイポグラフィの主張が強すぎる点も痛い。スポンサーや自治体のアピール(商業的意図)としては100点だが、せっかくの繊細なグロリオサの柄を無骨な明朝体が真っ二つに分断してしまっており、ファッション性(街着としての価値)を著しく下げてしまっている。アイデンティティの主張と、プロダクトとしての洗練さのジレンマが、ここに表れてしまっているのは少し勿体ないと感じる。

Away Kit レビュー

<引用>高知ユナイテッドスポーツクラブ 公式サイトより引用
http://kochi-usc.jp/news/news-54518/

続いて、Away Kitを分析していこう。

色彩分析

メインカラーの色相・トーン分析

Home Kitが炎のように重厚な「動」のデザインであったのに対し、Away Kitは白(ホワイト)をベースカラーにしたクリーンで静謐な「静」のデザインである。
注目すべきは、Home Kitと同じグロリオサの柄が、ここでは「ライトグレー(ltg)」で描かれている点である。PCCSにおいて白とライトグレーの組み合わせは、無彩色同士の「カマイユ配色」である。Home Kitが燃え盛る情熱を表現していたのに対し、こちらはグロリオサのシルエットがまるで氷の結晶か、あるいは精巧な大理石の彫刻のように浮かび上がる。全く同じ柄でありながら、色とトーンを無彩色に振り切ることで、相反する「洗練された冷たさ」を演出しているのは、デザイナーの見事な手腕と言える。

コントラストと圧倒的な視認性

この白とライトグレーの淡いベースに対して、胸の「高知家」ロゴや胸番号の「10」には、Home Kitのサイドパネルで使われていた「ダークグリーン」が採用されている。
ここには明確な色彩的意図が存在する。高明度のベースに対して低明度の文字を置くことで、強烈な「明度対比」を生み出しているのだ。Home Kitの「暗い背景×白い文字」の逆転現象であるが、実は白背景に暗い文字のほうが、輪郭がよりシャープに認識される(ハレーションが起きにくい)ため、文字の可読性・視認性という点においてはAway Kitの方が圧倒的に優れている。遠く離れたアウェイのスタジアムのスタンドからでも、背番号が瞬時に判別できるはずだ。

差し色のゴールドがもたらす高級感

Away Kitにおいても、袖口の10周年を示す10本のラインにはゴールドが使われている。無彩色(白・グレー)とダークグリーンの組み合わせは、ともすれば事務的で地味な印象、悪く言えば「練習着っぽさ」を与えかねないリスクを孕んでいる。しかし、ここに金属色であるゴールドが加わることで、全体の彩度コントラストが一気に引き締まり、記念イヤーにふさわしい「格式の高さ」と「高級感」がプラスされている。色彩学において、無彩色はどの有彩色とも調和する万能な背景であるため、ゴールドの輝きがHome Kit以上に際立って見える点も高く評価できる。

批評

色彩学の視点で斬るファッション性と機能性

色彩学の視点から言わせてもらえば、このAway Kitはファッションとしての完成度がすこぶる高い。近年のサッカートレンドである「ライフスタイルとの融合(街着としてのユニフォーム)」という観点で見れば、Home Kitよりもこちらの方が一般層や若者ウケが良いだろう。モノトーン基調のボタニカル柄は、デニムやスラックスなどの日常着と合わせても全く違和感がなく、スタジアムへの行き帰りだけでなく、日常着でもスタイリッシュに決まる。機能性(視認性)とファッション性を極めて高い次元で両立させた、秀逸なデザインである。

商業的な意図とクラブアイデンティティの昇華

Home KitとAway Kitは、二つセットで一つのクラブの物語を紡ぐべきである。その点において、このAway Kitは完璧なカウンターパートとして機能している。Home Kitが「高知の熱と血」を体現しているとすれば、Away Kitは「高知の誇りと品格」を体現していると言っていい。
生誕190周年を迎える坂本龍馬の家紋も、純白のキャンバスの上ではより凛とした表情を見せている。「高知県が生産量日本一のグロリオサをまとう」というクラブの確固たるアイデンティティを、アウェイの地(敵地)でスマートかつ上品に見せつけることができる。商業的に「売れるデザイン」であると同時に、クラブの矜持をしっかりと表現している。

改善点としての「統一感の欠如」への危惧

しかし、この完璧に思えるAway Kitにも、あえて批判のメスを入れざるを得ない部分がある。それは、白ベースだからこそ余計に悪目立ちしてしまっている「スポンサーロゴの多色性」というノイズである。
右胸の「高知銀行」の緑と青のマーク、左胸の「旭食品」の赤と黒のロゴ。企業のCI(コーポレート・アイデンティティ)のオリジナルカラーをそのまま載せなければならないという商業的な大人の事情は痛いほど分かる。しかし、ユニフォーム全体を無彩色+ダークグリーンという洗練されたトーンで完璧に調和させているにもかかわらず、胸元に突然ビビッドな赤や青がポンと置かれることで、色彩調和(ドミナントカラーの法則)が局所的に崩壊してしまっているのだ。これがもし、スポンサーロゴもすべてダークグリーン、あるいはモノトーンに統一されていたら、間違いなくJリーグ史に残る傑作キットになっていたはずだ。商業的制約がデザインの究極のポテンシャルを引き下げてしまっている現実は、誠に惜しいと言わざるを得ない。但し、スポンサー様には大感謝しているという前提はあります。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は色彩学の視点から、高知ユナイテッドSCの2026シーズン Home Kit & Away Kitを色彩学の理論に基づいて徹底解剖してみました。

全体を通して強く感じるのは、サプライヤーであるATHLETAとクラブが「10周年」という重要な節目に懸ける並々ならぬ情熱とこだわりです。「グロリオサ」という非常にアクの強いモチーフを用いながらも、Home Kitではダークトーンの重厚感で闘争心を煽り、Away Kitではカマイユ配色の洗練で品格を示すという、トーンの分散を見事にコントロールした素晴らしいコレクションでした。
一部、視覚混合の懸念やスポンサーカラーのノイズといった課題(批判点)もあえて厳しく指摘させていただきましたが、それすらも「地域密着のクラブ」が抱えるリアルな体温であり、泥臭い魅力の一部だと感じさせてくれます。

燃え上がる炎のような情熱を身に纏うHome Kitと、氷の彫刻のように冷たく美しいAway Kit。
読者の皆さんは、どちらのデザインに心を奪われましたか?

色彩には、人を行動に駆り立て、歴史を動かす力があります。ピッチ上でこのグロリオサがどのように躍動するのか、そして色が持つ力を味方につけた高知ユナイテッドSCが、坂本龍馬のように新たな歴史の夜明けを切り拓いていくのか。

さあ、スタジアムを赤色で染め上げよう。そして、高知ユナイテッドSCの力で高知がさらに盛り上がることを祈っております。

※著作権・商標権を侵害している場合は、速やかに対処しますので、ご連絡ください。

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