1. はじめに
こんにちは、色彩とフットボールを愛するブログライターYchanです。
2026年2月6日(金) 百年構想リーグが開幕します。各チームのユニフォームが発表されているので、百年構想Jリーグユニフォームレビュー特集を勝手に開催。
今回紹介するクラブは、京都サンガF.C.🟣🐦🔥
これまでの京都サンガと言えば、雅(みやび)で高貴な「帝(みかど)の紫」を想起させる、ソリッドでクリーンなデザインが主流でした。しかし、今回PUMAから投下されたHome Kitは、一見すると「カモフラージュ柄」で挑戦を感じるデザインとなっています。
2. 【前提知識】サッカーにおける「色の機能」とは?
本題に入る前に、少しだけ色彩学の講義をさせてください。これを理解すれば、あなたのユニフォームを見る目は劇的に変わります。サッカーにおいて色は単なる装飾ではなく「機能」という側面もあります。
① 進出色と後退色
色は距離感を狂わせます。
・進出色(Advancing Color):赤、橙、黄などの暖色系。実際より飛び出して、近くに見えます。
・後退色(Receding Color):青、青紫などの寒色系。実際より奥に、遠くに見えます。
京都の「紫」は、本来「後退色」寄りです。つまり、ピッチ上では実際よりも「一歩引いている」ように見えがち。これをどうカバーするかが、強そうなユニフォームを作る鍵となります。
② 興奮色と鎮静色
・興奮色:赤色系。交感神経を刺激し、心拍数を上げます。闘争本能を呼び覚ます色。
・鎮静色:青・紫系。副交感神経に働きかけ、冷静な判断を促します。
京都の紫は「冷静さ」を象徴しますが、サッカーは格闘技。冷静なだけでは勝てません。どこかに「赤(興奮色)」のスパイスが必要になるのです。
③ PCCS(日本色研配色体系)
今回のレビューでは、色の住所を示すためにPCCSという規格を使います。
・色相(Hue):色み(赤、青、紫など)。
・トーン(Tone):色の調子(明度と彩度の複合概念)。
※「v(ビビッド=鮮やか)」「dp(ディープ=濃い)」「lt(ライト=浅い)」などで表す。
これらを頭の片隅に置いて、いざ、実物を見ていきましょう。
3. Home Kit レビュー:高貴なカオスか、戦術的迷彩か

<引用>京都サンガF.C.公式サイトより引用
https://www.sanga-fc.jp/news/detail/20588
まずはHome Kit。
「原点回帰」を謳いながら、その実、極めてアグレッシブなグラフィックを採用してきました。
3-1. 色彩分析:紫のトーン・オン・トーン
【ベースカラー:紫の多層構造】
メインカラーはもちろん紫ですが、単色ではありません。
PCCSで言えば、ベースにあるのは「v20(Vivid Violet)」付近の高彩度な紫と、「d20(Dull Violet)」や「dp20(Deep Violet)」といった、彩度や明度を落とした紫が複雑に絡み合っています。
これを「トーン・オン・トーン配色(Tone on Tone)」と呼びます。同一色相(紫)の中で、トーン(調子)だけを変える手法です。
この配色の最大のメリットは、「統一感を保ちながら、立体感を出す」こと。
単色の紫は平面的でのっぺりしがちですが、このカモフラージュ柄のような濃淡は、選手の肉体の凹凸を強調し、フィジカルを実際よりも逞しく見せる効果(マッスル・エフェクトとでも呼びましょうか)が期待できます。
【アクセントカラー:鳳凰の赤】
脇腹(サイドパネル)に配置された「赤」。これはクラブの象徴である鳳凰、そして未来への飛躍を意味します。
色彩学的には、紫(20:V)と赤(2:R)は、色相環上で「中差色相配色」の関係にあります。
補色(反対色)ほど強烈なハレーションは起こしませんが、類似色(隣の色)ほど馴染みすぎない。「調和しつつも、確かな主張がある」絶妙な距離感です。
この赤が「興奮色」として機能し、沈静的な紫のベースに「攻撃性」というスパイスを加えています。
【ロゴの視認性】
スポンサーロゴ(KYOCERA、HORIBAなど)は白抜き(White)。
紫(明度が比較的低い)の上に白(明度最大)を置くのは、「明度コントラスト」が最大化され、視認性(Visibility)と誘目性(Attention Value)が担保されています。
3-2. ネット上の評判
X(旧Twitter)でのサポーターの声を拾ってみました。
- Positive(賞賛)
- 「カモフラ柄が今っぽい!」
- 「脇の赤が効いてる。」
- Negative(批判)
- 「テンプレデザインはやめてほしい。」
- 「迷彩は京都の雅さとは違う気がする。」
3-3. 色彩学的批評
さて、ここからが本番です。
このHome Kit、結論から言えば「色彩設計としては極めて高度だが、ブランディングとしてはリスクが高い」一着です。
素晴らしいのは、「紫という色の弱点の克服」です。
紫は、ともすれば「暗い」「地味」「宗教的」に見えがちです。しかし、今回の明度差のあるパターンを採用することで、動的なエネルギー(Dynamic Energy)を付与することに成功しています。
ピッチ上の選手は常に動いています。この不規則なパターンは、動くことで視覚的な「ゆらぎ」を生み、相手ディフェンダーに対して「捉えどころのない」という心理的効果(幻惑効果)を与える可能性があります。これは機能美と言えます。
また、黒の襟と袖口(リブ)も見逃せません。これを「セパレーションカラー(Separation Color)」と言います。
ボディの柄が複雑な分、末端を無彩色(黒)で引き締めることで、全体が散漫になるのを防いでいます。この黒がなければ、単なる「派手なパジャマ」になっていたでしょう。PUMAのデザインチーム、いい仕事をしています。
しかし、批判票も投じざるを得ません。
最大の問題は、「テクスチャのノイズ過多」です。
「歴史の積み重なり」を表現するための濃淡でしょうが、遠目(スタンド上段やテレビ画面)から見たとき、これが「濁り」として知覚される恐れがあります。これを「視覚混合(Optical Mixing)」と言います。
v20(鮮やかな紫)とd20(鈍い紫)が遠距離で混ざると、全体として「彩度の落ちた、くすんだ紫」に見えてしまうのです。
また、京都という都市が持つ「静謐な美」との整合性です。カモフラージュ(迷彩)は本来、軍事由来の「隠れるための柄」。
「世界に打って出る」はずの百年構想リーグの年に、「隠れる」意匠を採用したのは皮肉なのか、それとも逆説的なアピールなのか。コンセプトの言語化にもう一歩踏み込みが欲しかったところです。
4. Away Kit レビュー:余白の美学と、計算された繋がり

<引用>京都サンガF.C.公式サイトより引用
https://www.sanga-fc.jp/news/detail/20588
続いて、Away Kit。
こちらは打って変わって白ベース。しかし、ただの白Tシャツではありません。
4-1. 色彩分析:図と地の反転
【ベースカラー:ホワイトの機能】
ベースはWhite。色彩学的には「光を反射する色」です。
夏のナイトゲームや、日中の試合において、熱吸収を抑えるという物理的なメリットがあります。
また、白は「無彩色」であり、どんな色とも調和します。ここに、Home Kitのエッセンスが注入されています。
【サイドパネル:Homeの遺伝子】
脇腹のパネルを見てください。ここにHome Kitと同じ「紫・赤・黒」のパターンが配置されています。
これは「類似性の法則(Law of Similarity)」を利用した、非常に賢いデザイン戦略です。
HomeとAwayで全く違うデザインにするのではなく、一部に共通の意匠を持たせることで、「これは同じチームの戦闘服である」というアイデンティティを保っています。
【配色の調和】
白地(高明度)に対し、サイドの紫・黒・赤(低〜中明度)は強いアクセントになります。
特に、黒のスポンサーロゴ(KYOCERA)とのコントラストは「可読性(Legibility)」において最強です。
Away戦という「アウェー(完全アウェイ)」な環境において、自分たちの存在とスポンサー名をはっきりと主張する。そのための「白×黒」の骨太な配色です。
4-2. ネット上の評判:安堵と物足りなさ
- Positive(賞賛)
- 「シンプルでかっこいい! 」
- 「白に紫の差し色が上品。」
- Negative(批判)
- 「よくあるPUMAのテンプレートって感じ。」
- 「面白みがない。」
- 「Homeのインパクトに比べると地味。」
4-3. 色彩学的批評:の視点で「斬る」
Awayに関しては、「商業的な最適解だが、情熱に欠ける」というのが正直な評価です。
評価すべきは「フォーカルポイント(視線の集中点)の制御」です。
前面を白で飛ばし、視線を両脇とエンブレム、そしてスポンサーロゴに集中させています。
特に、サイドパネルの曲線的なカッティングは、人間のボディラインを美しく見せる効果があります。白の膨張色(太って見える)というデメリットを、サイドの収縮色(黒・紫)で物理的に削ぎ落とす。これを「視覚的なシェイピング」と呼びます。
選手がスタイリッシュに見えることは、現代サッカーにおいて重要な「商品価値」の一つです。その点で、このAway Kitは非常に優秀なプロダクトです。
一方で、辛口な意見も言わせてください。
「無難すぎる(Too Safe)」。
色彩検定の教科書に出てきそうな、「白ベース+アクセントカラー」という基本中の基本を守りすぎています。
Home Kitであれだけ攻めた「カモフラージュ×紫の濃淡」をやったのであれば、Awayでもその要素をもっと大胆に取り入れても良かった。例えば、白ベースに薄いグレーで同じパターンを入れるなど。
現在のデザインは、確かに綺麗ですが、「京都サンガでなければならない理由」が希薄です。エンブレムを隠せば、他のチーム(例えばセレッソ大阪や清水エスパルスなど)のAway Kitと言われても違和感がありません。
「百年構想」という特別な年に、この「テンプレート感」は少し寂しい。色彩の冒険を、Awayでも見たかったというのが本音です。
5. おわりに:伝統を纏うか、革新を纏うか
2026年、京都サンガF.C.が選んだのは、
「Homeでの大胆な革新」と「Awayでの手堅い実利」という、極めて戦略的なコントラストでした。
色彩学的に見れば、Home Kitの「紫のトーン・オン・トーン」は、クラブの歴史の深層(Deep Tone)と未来への鮮やかな意志(Vivid Tone)を混在させた、非常に意欲的な試みです。
一方、Away Kitは、その混沌を整理整頓し、ビジネスライクに徹した「大人のデザイン」と言えます。
私の総評として、この2着は「セットで見ることで完成する」コレクションです。
情熱と冷静。混沌と秩序。
この対比こそが、これからの100年を歩む京都サンガの姿そのものなのかもしれません。
さて、皆さんはどちらの色彩戦略に心を動かされましたか?
「複雑な歴史を背負ったHome」か、「潔い未来を見据えたAway」か。
ぜひ、コメント欄やSNSであなたの「色眼鏡」を通した感想を教えてください。
スタジアムが、この新しい紫で埋め尽くされることを楽しみにしています。
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